退職手続き!会社側の基本対応!従業員別の流れと書類チェックポイント

query_builder 2025/04/21
コラム
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退職手続き、会社側の対応で悩んでいませんか?

 

従業員の退職が決まったものの、離職票や資格喪失届など、何をいつまでにどう処理すればよいのか明確でなく、不安を抱えている企業担当者は少なくありません。特に健康保険や雇用保険、住民税といった社会保険関連の提出期限や、証明書の発行遅延によるトラブルは、業務の信頼性にも関わる重要な課題です。

 

たとえば、退職日の翌日から起算して5日以内に資格喪失届の提出が必要であることや、雇用保険の離職票発行は離職した翌々日の原則10日以内が望ましいといった期限を守らない場合、ハローワークや年金事務所からの行政指導の対象となることもあります。さらに、源泉徴収票の発行や給与計算の締め処理なども含めると、会社側の業務負担は想像以上に大きく、漏れや遅れが発生しやすいのが現実です。

 

この記事では、退職手続きに必要な書類や提出の流れ、期限管理、トラブルを未然に防ぐポイントを徹底解説しています。社内の労務管理に携わる担当者が「もう迷わずに処理できる」と実感できる内容を揃えていますので、最後まで読んでいただくことで、対応の不安や手続きミスのリスクを大きく減らすことができます。

 

自社の信頼を守るためにも、今すぐチェックしておきたい実務対応のすべてを、本記事で明確にしていきましょう。

 

退職手続きは会社側の重要な業務!基本の流れを押さえる

退職手続きの意義と会社側の責任

従業員が退職する際に会社側が適切に手続きを進めることは、単なる事務処理ではなく、法的責任や企業イメージ、さらには従業員の生活に直結する重要な業務です。退職手続きにおける遅延やミスは、離職票の未発行や社会保険の脱退処理漏れ、住民税の誤徴収など、労使間のトラブルの原因になり得ます。

 

多くの企業では退職届の提出をもって退職のスタートと考えますが、そこから先に必要な処理は多岐にわたります。まず必要なのは、退職日と引き継ぎ期間の明確化です。これが曖昧なまま進められると、業務の断絶や顧客対応ミスにつながり、企業としての信用にも関わります。

 

また、雇用保険や社会保険の資格喪失の届け出は、法律で定められた期限内に対応しなければなりません。たとえば、雇用保険被保険者資格喪失届は、退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。この提出が遅れると、離職票の発行も遅れ、退職者が次のステップへ進むための障害となってしまいます。

 

さらに、退職後の手続きが完了していないことで、退職者の住民税が二重徴収されるケースや、健康保険証の返却漏れによる保険の不正利用といったリスクも潜んでいます。これらはすべて、企業の労務管理体制が問われる深刻な問題です。

 

退職手続きの適切な遂行は、企業の信頼性を高めると同時に、従業員との関係を良好に保つためにも必要不可欠です。円満退職をサポートする姿勢は、企業ブランドの向上にも繋がります。

 

退職に伴う書類や制度、税務の基礎

会社が従業員の退職時に対応すべき書類や制度は多岐にわたりますが、それぞれに明確な目的と提出先、提出期限があります。正確な知識と管理体制がなければ、手続きの遅れや漏れが発生しやすくなります。

 

まず、退職者本人に交付する書類として代表的なものには、離職票、源泉徴収票、退職証明書、健康保険資格喪失証明書などがあります。離職票は退職者が失業保険を申請するために必要不可欠な書類であり、本人の希望があれば速やかに交付しなければなりません。発行が遅れることで、転職活動や失業給付の申請が滞り、退職者の生活に直接的な悪影響を与える可能性があります。

 

次に、社会保険や雇用保険に関する手続きとして、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届、雇用保険被保険者資格喪失届などがあり、これらは年金事務所やハローワークへの提出が必要です。会社がこれらを適切に処理しなかった場合、保険料が二重に徴収されたり、退職者の再就職先での保険加入手続きに支障をきたす可能性があります。

 

税務面では、退職月の給与から住民税や所得税の精算を行う必要があります。特別徴収の対象となる住民税は退職時に一括徴収するのが一般的ですが、場合によっては普通徴収へ切り替える必要があります。この切り替えが行われていない場合、退職者は二重納付を強いられることになります。

 

このように、退職時には数多くの制度や手続きが関係しており、それぞれの意味と役割を正しく理解して対応することが、退職者にとっても企業にとっても非常に重要です。労務担当者はこれらの知識を常に最新の状態に保ち、定期的なマニュアルの見直しや研修の実施を通じて、社内全体での理解を深めていくことが求められます。

 

退職時に必要な主な書類と手続き一覧表

退職時の手続きは複雑であり、会社側が交付すべき書類や行政機関への提出が求められるものが多数存在します。以下の表に、主な書類とその目的、提出先をまとめました。

 

書類名 主な目的 提出先
離職票 雇用保険受給の申請に必要 ハローワーク
源泉徴収票 年末調整・確定申告など所得税関連で必要 本人
健康保険資格喪失証明書 新しい健康保険加入や任意継続時に必要 本人
退職証明書 転職先提出用・労働条件証明 本人または転職先
雇用保険被保険者資格喪失届 雇用保険脱退処理 ハローワーク
健康保険・厚生年金保険資格喪失届 社会保険脱退処理 日本年金機構または健康保険組合
特別徴収に係る給与所得者異動届出書 住民税の普通徴収への切り替え手続き 市区町村(自治体)
社員証・名刺・貸与品返却確認書 貸与物の返却記録として必要 社内保管

 

それぞれの書類は、提出期限や発行義務が法律で定められているものもあり、漏れや遅れが企業の信頼性低下につながります。労務担当者は一覧表を活用し、漏れのない対応を行うことが求められます。

 

退職手続きで会社側が行う全体フロー!チェックリスト付きで時系列に整理

退職届の受理と意思確認

退職手続きの最初のステップは、退職届の受理と本人の退職意思の確認です。会社側は従業員からの退職の申し出を受けた際、その意思が自由意思によるものであることを明確に確認する必要があります。これは労働基準法や民法などの法的観点からも重要なプロセスであり、退職の強要やパワハラなどと誤解されないための証拠保全としても必要です。

 

退職届の提出には、口頭による申し出だけでなく、書面や電子データとして記録が残る形式での提出が望まれます。具体的には、紙の退職届に署名押印されたものや、メールや社内の人事システム経由での正式な通知などが該当します。退職の申し出に際しては、提出日、退職希望日、退職理由などの記載内容も確認し、誤解のないよう社内にて一元管理しておくことが求められます。

 

退職理由が自己都合である場合には、会社側の対応も変わってきます。自己都合退職では離職票の扱いや雇用保険の給付条件に違いがあるため、その確認を本人と行い、記録に残すことがトラブル回避につながります。また、後日トラブルを避けるためにも、退職届を受理した日や受理した担当者の氏名なども合わせて記録し、退職手続きチェックリストに記入しておくことが望ましいです。

 

退職日・引き継ぎスケジュールの設定

退職の申し出が受理された後、次に会社側が進めるべき対応は退職日および業務引き継ぎスケジュールの調整です。退職日を明確に設定することは、社会保険や雇用保険の資格喪失日、住民税の特別徴収手続き、さらには給与の最終支払い計算に直結するため、誤りや曖昧さがあってはなりません。

 

退職日までの期間が短い場合でも、業務の引き継ぎは必須となります。引き継ぎ対象となる業務内容の洗い出し、後任者の選定、マニュアルや業務資料の準備などを計画的に行うことが重要です。とくに顧客対応や取引先との関係性を伴う業務の場合は、引き継ぎが不十分だと企業の信用問題に発展するリスクもあるため、事前にスケジュールを明示し、関係各所に共有しておくことが求められます。

 

また、退職までの残り勤務日数や有給休暇の消化状況を把握することで、実際の出勤日や引き継ぎの対応日程を柔軟に調整できます。これらは就業規則や労働契約に基づき、退職者の希望も考慮しながら、双方にとって納得できる形で決定することが理想です。引き継ぎ完了の証明として、社内での承認フローやチェックリストによる進捗管理もあわせて実施することで、退職時のトラブルを未然に防ぐことができます。

 

退職日当日の対応と必要書類の確認

退職日当日は、従業員本人にとっても企業側にとっても重要な日です。この日をスムーズに迎えるためには、事前の準備と当日の対応が鍵となります。まず、会社が従業員に貸与していた備品や資産の返却を確実に行う必要があります。健康保険証、社員証、入館証、パソコン、スマートフォンなど、会社から貸与されていたものはすべて確認し、漏れのないようにチェックを行います。

 

また、退職に伴う書類の交付も重要です。源泉徴収票や退職証明書、健康保険資格喪失証明書、雇用保険被保険者証など、従業員が再就職や失業保険の申請などで必要となる書類は、退職日までに準備し、確実に本人へ手渡すか、郵送の準備を行う必要があります。書類の不備や未交付が後日トラブルを招く可能性があるため、社内の人事部門や労務担当者はチェックリストをもとに進捗を確認しながら対応を進めます。

 

このような表を用意しておくことで、退職手続きの抜け漏れを防ぎ、スムーズな対応が可能になります。特に退職後の書類発行に関しては、従業員が再就職や公的手続きで必要とするため、迅速かつ正確に対応することが企業の信頼を守ることにもつながります。すべての対応が完了した記録を社内に残すことも忘れてはなりません。

 

退職手続きに必要な書類とは?提出・交付・回収の全リスト

会社が退職者へ交付すべき書類一覧(離職票・源泉徴収票など)

退職時に会社側が退職者に交付すべき書類は、単なる事務処理の一環ではなく、従業員の今後の生活や転職活動に大きく関わる非常に重要なものです。例えば離職票は、失業給付の申請に必要不可欠であり、発行が遅れると求職者支援制度の利用や雇用保険の受給に支障が生じる可能性があります。また、源泉徴収票は転職先や確定申告の際に使用するもので、年末調整の計算にも直結します。

 

これらの書類を交付する際には、発行日や記載内容にミスがないかを必ず確認することが大切です。誤記載や提出漏れはトラブルの原因となり、会社の信頼性にも関わります。健康保険資格喪失証明書も忘れてはならない書類の一つで、退職者が任意継続や国民健康保険へ切り替える際に必要となるため、退職日翌日から速やかに交付できるよう準備しておく必要があります。

 

その他、退職証明書は転職時に求められることがあり、本人からの希望があれば速やかに発行する義務があります。交付する際には、労働基準法に基づき本人が不利にならない内容を記載する必要があります。公的機関への手続きにも関係するこれらの書類は、明確なルールのもとに対応し、後々のトラブルを未然に防ぐためにも、会社の人事担当者がしっかり管理すべき責任範囲です。

 

退職者から回収する必要書類・備品とは(健康保険証・社員証など)

退職に伴い会社が行うべきもう一つの重要な手続きが、退職者からの備品や書類の回収です。会社貸与物の未返却は、情報漏洩や業務の不正利用につながる恐れもあるため、漏れなく実施する必要があります。中でも健康保険証は、資格喪失日以降の医療機関利用によって会社に損害が及ぶリスクがあるため、必ず返却を求めましょう。社員証や入館証も、セキュリティの観点から厳重に管理すべき対象です。

 

名刺や制服、社章などの小物類も、企業によっては会社資産とされているケースがあり、退職後の私的利用を避けるためにも必ず回収するよう指示します。貸与されたPCやスマートフォンに関しては、業務データの有無を確認し、データ消去または会社保管のルールを徹底することが求められます。端末の返却と同時に、ログイン情報やパスワードの管理も見直し、外部からのアクセスを防止します。

 

また、財形貯蓄や共済制度に加入していた場合、その書類や手続きの案内文も退職者から返却・提出されることがあるため、制度ごとの対応マニュアルを作成しておくとスムーズです。業務引き継ぎ書など、社内に残すべき文書も忘れずに回収する必要があります。こうした退職時の回収物は、チェックリスト化し担当者が都度確認できる体制を整えておくと、ヒューマンエラーを防ぎやすくなります。

 

提出が必要な行政機関向け書類と期限(ハローワーク・年金機構)

退職後の手続きでは、会社側が所定の機関に提出しなければならない書類が複数存在します。これらの手続きを遅滞なく行うことは、法的義務であると同時に、退職者に不利益を与えないための重要な配慮でもあります。特に雇用保険の資格喪失届は、退職日翌々日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。これにより、離職票の発行手続きが正式に始まり、退職者が失業給付を受けるための準備が整います。

 

次に、健康保険の資格喪失届については、協会けんぽまたは健康保険組合へ5日以内に提出することが求められています。期限を超えると、資格喪失日以降の医療費が会社に請求されるリスクがあり、適切な対応が不可欠です。厚生年金保険に関しても、同様に年金機構への喪失届提出が必要で、こちらも速やかに行うことで、被保険者情報の誤登録を防ぐことができます。

 

以下に、主要な提出書類と提出先、提出期限をまとめた一覧を記載します。

 

書類名 提出先 提出期限
雇用保険資格喪失届 ハローワーク 退職翌々日から10日以内
健康保険・厚生年金資格喪失届 協会けんぽまたは年金機構 退職日から5日以内
離職票交付申請書 ハローワーク 雇用保険喪失手続き後すぐ
退職証明書 退職者へ 要求があった場合速やかに交付

 

これらの書類は、提出先の担当部署ごとに異なった書式や電子申請の可否があるため、最新情報を確認しながら慎重に準備することが大切です。特に電子申請が可能な項目については、手続きの効率化と証拠保全の観点からも積極的な導入が推奨されます。会社として正確な提出を心がけることで、退職者にとっても安心できる環境が整備されるのです。

 

退職手続きに関する期限・ルール!何日以内に何をすべきか?

社会保険・雇用保険の喪失手続きと期限

会社が退職手続きを行う際に、まず対応が求められるのが社会保険および雇用保険の喪失手続きです。これらの手続きは法律で期限が定められており、遅延すると会社にペナルティが発生する可能性があるため、注意が必要です。具体的には、退職した従業員が健康保険および厚生年金保険に加入していた場合、その資格喪失届を退職日の翌日から5日以内に管轄の年金事務所へ提出しなければなりません。これは健康保険法および厚生年金保険法に基づく義務であり、社会保険の適用を受ける事業所には法的な責任が伴います。

 

一方で雇用保険に関しては、被保険者資格喪失届を10日以内にハローワークへ提出することが求められています。退職日を起点としてカウントされるため、休業日や土日を含めて計算する点にも留意が必要です。喪失日と提出日が大幅にずれると、退職者が失業給付を受けるための手続きが遅れ、生活に支障が出る可能性もあります。企業としては、従業員の生活設計を妨げないよう、速やかに必要な書類を整え、提出を完了する体制を整えることが重要です。

 

さらに、社会保険の資格喪失に伴い、健康保険証の返却と同時に健康保険資格喪失証明書の発行も必要になります。この証明書は退職者が国民健康保険へ切り替える際や任意継続を選択する際に使用するため、会社側で用意して郵送や手渡しで速やかに交付することが望ましいです。これらの流れを怠ると、退職者からの問い合わせが増え、事務処理負担が拡大する恐れもあります。

 

離職票の発行・送付はいつまでに必要か

離職票は、退職者がハローワークで失業給付の申請を行う際に必須となる重要書類です。会社が行うべき義務のひとつにこの離職票の発行がありますが、その発行タイミングについて正確に理解しておくことが求められます。雇用保険の資格喪失届と一緒に、離職証明書を作成してハローワークに提出し、承認を受けた後に発行されるのが一般的な流れです。

 

この離職票の交付は、厚生労働省のガイドラインにおいて退職日から10日以内が目安とされています。特に退職者から発行希望があった場合は、速やかに対応することが法的にも求められており、怠るとトラブルに発展しかねません。会社側の対応が遅れた場合、退職者が「離職票が届かない」とハローワークに相談する事例も少なくありません。その場合、企業に対して指導や注意喚起が入るケースもあります。

 

また、離職票には退職理由の記載が必要となりますが、この記載内容が失業給付の受給資格や期間に直結するため、事実と異なる内容や曖昧な表現は避けるべきです。特に「自己都合退職」か「会社都合退職」かで受給開始時期が大きく異なることから、記載には正確性と客観性が求められます。

 

退職者が希望すれば、郵送での交付も可能ですが、その際は発行日や送付方法、追跡番号などを記録に残しておくと安心です。再発行の要望が出る可能性もあるため、発行済みの離職票の控えやデータを一定期間保管しておく体制が企業には求められます。

 

住民税・所得税などの税務処理の注意点

退職に伴う税務処理は、社会保険や雇用保険とは異なる管理が必要であり、特に住民税と所得税の扱いには細心の注意が求められます。まず所得税については、退職月の給与を含めて源泉徴収する必要があります。通常の月次給与と同様、最終の給与計算時に所得税の計算を行い、税額を正確に控除することが求められます。また年の途中での退職の場合、退職者が年末調整を会社で受けられないケースが多く、その際は本人が確定申告を行う必要があることを明示しておくことが大切です。

 

住民税については、退職時期によって納付方法が異なり「特別徴収」による天引きと「普通徴収」による個人納付の2パターンが存在します。

 

税務処理における期限管理と正確性は、企業の信頼性にも直結します。退職手続きにおいても税金関連の処理は忘れず、計画的かつ丁寧に進めることが重要です。以上を踏まえ、企業としては制度理解と体制整備を徹底する必要があります。

トラブルを防ぐための対応ポイント!退職拒否・手続き放置など

退職手続きをしてくれないケースへの対応法

退職を申し出たにもかかわらず、会社側が手続きを進めてくれないというケースは決して珍しくありません。このような状況は従業員の転職活動や公的手続きに重大な支障を及ぼすため、法的観点からも適切に対応する必要があります。

 

まず前提として、退職は労働者の一方的な意思表示によって成立するものです。正社員であってもパートタイムであっても、退職の意思を明確に伝えた段階で法的には効果が生じます。したがって、会社が手続きをしないからといって退職そのものが無効になることはありません。ただし、証明書の交付や各種手続きの放置が続くと、離職票や健康保険資格喪失証明書の取得に支障が出るため、行動が必要です。

 

このようなケースでは、まず退職の意思を伝えた証拠を確保することが極めて重要です。口頭ではなく書面、特に内容証明郵便を使って退職届を送付することで、退職日と意思表示の記録を残すことができます。また、退職日を明確にしたうえで、退職後に必要となる書類の発行を求める旨も記載しておくと良いでしょう。

 

それでも会社が対応しない場合は、地域の労働基準監督署に相談することが有効です。労基署は企業の法令違反に対し、指導や是正勧告を行う権限を持っています。また、民法上の不法行為に該当する可能性もあるため、労務に詳しい専門家や弁護士に相談し、損害賠償請求に備えた記録整備も行うことが推奨されます。

 

企業側の対応が遅いと、失業保険の受給資格確認や国民健康保険の切り替えにも支障をきたす場合があります。そのため、早めの行動と客観的な証拠の確保が、後のトラブル防止につながります。

 

退職届を受け取らない・放置される事例

退職の意思を示したにもかかわらず、会社が退職届の受け取りを拒否する、あるいは無視するという対応を取る場合があります。このような状況もまた、労働者の権利を損なう可能性があるため注意が必要です。

 

退職届を手渡しで提出した際に受け取りを拒否された場合は、その場で録音することや、第三者の立ち会いのもとで手渡すなど、証拠を残す工夫が求められます。相手が受け取りを拒んだとしても、退職の意思表示自体は法律的に有効であり、会社の同意がなければ退職できないという誤解は払拭するべきです。

 

証拠の残し方として最も信頼性が高いのは、内容証明郵便の利用です。この方法を用いることで、いつ、誰に、どのような内容で退職の意思を伝えたかを記録できます。郵送記録も残り、法的証拠としても認められやすいため、退職を巡るトラブルにおいて有力な対応策となります。

 

また、退職届の提出と合わせて、退職予定日やそれまでの引き継ぎ計画、健康保険証や貸与物の返却予定についても文書で伝えることが重要です。このように記載しておくことで、誠実に対応していることの証拠となり、後のトラブル予防にもつながります。

 

なお、退職届を受け取らない、放置するといった企業の対応が悪質な場合は、労働基準監督署への通報や労働局の相談窓口の活用も視野に入れるべきです。正当な退職を不当に阻む企業に対しては、行政からの是正指導が入る可能性が高まります。退職後の手続きがスムーズに進むよう、最初の意思表示段階から慎重に対応を進めていくことが求められます。

 

職証明書・健康保険資格喪失証明書が発行されない場合

退職後に必要となる書類の中でも、退職証明書や健康保険資格喪失証明書の発行が遅れる、または発行を拒否されるというケースは、次の職場での社会保険手続きや国民健康保険の加入に大きな影響を及ぼします。このような状況に陥った際は、法的根拠に基づいた対応が欠かせません。

 

労働基準法により、従業員からの請求があれば、会社は遅滞なく退職証明書を交付する義務があります。記載事項も限定されており、退職日、業務の種類、在籍期間、退職理由、賃金などについて本人が請求した内容に限って記載されます。つまり、本人の同意なしに退職理由を記載することはできないため、意図的な嫌がらせ的記載を防止する仕組みも整っています。

 

一方、健康保険資格喪失証明書は、退職後に被保険者資格が喪失したことを示す書類であり、国民健康保険への切り替えや転職先での健康保険加入に必要となる場合があります。この証明書は企業から健康保険組合または協会けんぽを通じて発行されることが多いため、発行の遅延や放置があった際には、該当する保険機関への直接連絡も有効です。

 

対応を誤ると、保険の空白期間が発生するおそれがあるため、退職前から発行申請の準備や書面での請求が重要です。万が一、会社が対応しない場合には、管轄の労働基準監督署や年金事務所などへ相談し、書面の発行を促すことができます。

 

以下の表は、発行されない場合の対応手段とその主な目的を整理したものです。

 

発行されない書類 対応手段 主な目的
退職証明書 労基署に相談/書面で請求 転職先提出や失業給付の申請
健康保険資格喪失証明書 協会けんぽ・組合へ直接相談 国保切替や新職場の保険加入手続き
離職票 ハローワーク経由で請求 失業保険の受給資格確認

 

書類の不交付は労働者の生活に直結する問題であるため、放置せず早急に適切な対応を取ることが求められます。行政機関との連携も視野に入れながら、冷静かつ粘り強く対応する姿勢が大切です。

 

まとめ

退職手続きにおける会社側の対応は、単なる書類処理にとどまらず、信頼性や法的リスクの回避にも直結する極めて重要な業務です。退職日から逆算したスケジュール管理や、提出期限の厳守、退職者とのやり取りの記録保持は、すべてが企業の労務品質を左右します。

 

特に社会保険の資格喪失届は退職日翌日から5日以内、雇用保険の離職票は10日以内の発行が望ましく、これらの手続きを怠ると、行政指導や退職者からの信頼低下を招く恐れがあります。また、源泉徴収票の発行、住民税の特別徴収や普通徴収の切り替えなど、給与計算に直結する項目も多く、給与支払報告書との整合性が求められる場面もあります。

 

読者の中には「そもそもどこまでが会社側の義務なのか」「遅れた場合に何が起こるのか」といった不安を感じている方も多いはずです。この記事では、手続きの流れだけでなく、証明書の発行義務や期限、トラブル回避のための記録の取り方、さらには退職届を受理しないケースや退職証明書が発行されない場合の対応まで、実務に即した情報を網羅しました。

 

企業の労務担当として安心できる対応を進めるためには、日頃から正しい知識を身につけ、制度や期限の変化にも柔軟に対応することが不可欠です。本記事を参考に、退職手続きに関する業務の抜け漏れを防ぎ、退職者と企業の双方が円満な形で関係を終えられるよう備えておくことが大切です。

 

よくある質問

Q.退職手続きで会社側が提出すべき書類は何がありますか?期限はありますか?
A.退職手続きで会社側が提出すべき書類には、雇用保険の資格喪失届や健康保険の資格喪失届、厚生年金保険の資格喪失届などがあり、いずれも指定期日内に所轄のハローワークや年金事務所に提出する必要があります。期限を過ぎると行政指導や罰則の対象となる場合があるため、従業員の退職日と提出スケジュールは正確に管理することが重要です。これらの書類提出には被保険者資格の確認や記載ミスのない申請が求められるため、給与計算や社会保険の担当者が細心の注意を払う必要があります。

 

Q.退職後に発行が必要な証明書には何がありますか?交付義務はありますか?
A.会社側が退職者に交付すべき証明書として、離職票、退職証明書、源泉徴収票、健康保険資格喪失証明書などが挙げられます。離職票は本人から希望があった場合に発行し、10日以内が望ましいとされています。源泉徴収票は年末調整対象かどうかで発行時期が異なりますが、遅延や未交付は税務申告に影響を与えるため注意が必要です。いずれも発行の遅れはトラブルにつながるため、退職後の手続きフローをあらかじめ整備し、退職者への対応方針を社内で共有しておくことが求められます。

 

Q.パートやアルバイトの退職でも離職票や健康保険証の返却は必要ですか?
A.パートやアルバイトであっても、雇用保険に加入していた場合は離職票の発行が必要となります。また、健康保険証についても、会社の社会保険に加入していた場合には必ず退職日に回収する必要があります。回収漏れが発覚した場合、被保険者の医療費負担の問題や資格喪失の遅延といったリスクが生じます。従業員区分に関係なく、退職手続きにおける必要書類の確認リストを作成し、対象者別に提出・回収すべき書類を明確にすることが企業の労務リスクを防ぐ手段となります。

 

Q.退職届を受け取らず手続きを放置された場合、従業員側からどう対応すればいいですか?
A.会社側が退職届を受理せず手続きを放置する行為は、労働契約法上の義務違反に該当する可能性があります。このようなケースでは、内容証明郵便を使って退職の意思表示を明確に記録し、証拠として残すことが重要です。また、録音や書面などの記録を確保することで、民法上の損害賠償リスクから身を守ることができます。最終的には、労働基準監督署に相談し、退職者としての法的地位や手続きを確認することが有効です。企業側の手続き放置によって発生した未処理の社会保険や雇用保険の資格喪失手続きも含め、速やかに行政機関に届け出る対応が推奨されます。